突然ですが、
ミソフォニアって、知っていますか?
私は彼のさきょうさんに出会うまで、全くその言葉を知りませんでした。
一緒にいるようになって半年がすぎた頃、
さきょうさんが私にその言葉を教えてくれたと同時に、自分はミソフォニアだという事を伝えてくれました。
”ミソフォニア”という言葉を知らない人は、知っておくべき。もしかしたら知らない間に人を不快にさせてしまっているかもしれません。
恋人がミソフォニアだった場合、自分はどんな気遣いができるのか。
私はこういう対処法をとっています。
ミソフォニアとは
ミソフォニアとは、聴覚系の病気の一種です。
音嫌悪症や音恐怖症と呼ばれることもあるようで、
症状としては、特定の音に対し普通の人よりも音が遥かに過敏に聞こえ、異常なほど不安感や怒りなどの否定的感情を覚えます。
そしてそれは家族や身内など、自分に近ければ近い存在ほど症状が強く出ます。
1.症状例
”異常なほど不安感や怒りを覚える”という特定の音とは、
例として
- 他人の咀嚼音
- パソコンのキータッチ音
- ペンのノック時のカチカチ音
- 咳払いや鼻をすする音
- 爪切りの音
- 他人の会話
- 笑い声
- 歯磨きの音
- いびきの音
- 指を鳴らす音
などが挙げられます。
その”特定の音”となるのは、人から出される音・人の行動で出される音がほとんどで、それは生活する上で繰り返し出される音です。
2.発症する時期
ミソフォニアを発症する時期は人それぞれ。
大半の人が成長期に発症し、『ミソフォニア』という言葉を知って自覚するまでは周りの不理解に苦しむ人が多くいるようです。
<ミソフォニアの発症時期>
- 小学生:24%
- 中学生:33%
- 高校生:22%
- それ以降:21%
(引用元:日本ミソフォニア協会)
3.症状の重さ
症状の重さは、人によって違います。
先ほど例にあげた症状がいくつも当てはまるという人もいれば、ある一つの音だけに否定的感情を持つ人もいます。
さらにその特定の音にだけでなく、その音が起こる行動を見ることで嫌悪感を抱く人もいるようです。
4.治療法
ミソフォニアを治す薬はありません。自身の苦手な音をただ避けるのみです。
避け方として、
- ノイズキャンセリング付きのイヤフォンをつける
- 耳栓をする
- 音楽を流す
- 意識を違うものに向ける
などがあるようですが、
これはその苦手な音自体を小さくするのではなく、雑音を流して気を紛らわすということになるので問題解決にはなりません。
私の彼(さきょうさん)
私の彼の症状を紹介します。
彼の苦手な音に対しての私の対処の仕方は時と場合によるのですが、それは彼の精神の状況次第で変わってきます。
1.症状
さきょうさんの苦手な音は、
- 他人の咀嚼音
- 飲み物を飲んだ時の喉越しの音
- 歯を磨く時に鳴る、歯ブラシの音
- トイレ掃除などに使うブラシを擦る音
です。
「この音が苦手!嫌いな音!」と自覚し始めたのは中学の頃。その時は”ミソフォニア”という言葉を知らなかったので、ただ人より苦手な音が特殊で、とても敏感に聞こえてしまうという認識をしていたようです。
ミソフォニアの症状の重さは人ぞれぞれ違いますが、
さきょうさんは常に音達を拾って全て過剰に反応してしまうのではなく、自分の精神の状況と音を出す人が自分にとってどんな人なのかで音を聞いた時の反応が変わってきます。
▶︎自分の精神面が関わってくるというのは、
同じ苦手な音を聞いた時でも、自分が気分が優れている時・落ち込んでいる時で全く反応が違くなるということ。
☞気分が落ち込んでいる時ほど音が過剰に聞こえ、イライラや嫌悪感が強くなります。
▶︎音を出す人が自分にとってどんな人なのかというのは、
同じ苦手な音を聞いた時でも、音を出した人が家族なのか、友人なのか、赤の他人なのかで全く反応が違くなるということです。
☞自分に近ければ近い存在であればあるほど、同じ苦手な音を出したとしてもそれが強く不快に感じます。
2.おかしいと気づいたのは殺意が芽生えたから(体験談)
殺意!?って感じですが、
これが大袈裟じゃなく本当のようで、他のウェブサイトにはあまりこの言葉では書かれていませんが、ダイレクトにその気持ちを伝えるとしたらこの言葉が一番合うみたいです。
<ここからはさきょうさんの体験談>
さきょうさんは自分に近ければ近い存在であればあるほど、苦手な音に過敏に反応します。
家族が歯磨きをしている時にそれは訪れたようで、いつもよりも耐えきれないほどのイライラと嫌悪感を覚え、不安を煽られているような気持ちになりました。いつも壁のない仲の良い関係の家族でしたが、音に関しては他で聞くよりも強く苛立ちを覚えてしまい、殺意と言っていいほどの気持ちになったそうです。
「家族に殺意が芽生えてしまうの?そこまで嫌な気持ちになるもの?」と、聞いた当初私は驚きましたが、さきょうさん自身が一番それを理解しているようでした。家族に対してそんな気持ちになってしまったことが衝撃的で、自分を軽蔑し、それが常にストレスに感じてしまう為、より自分の中で芽生える気持ちを抑えられなくなってしまうようでした。
”殺意”なんて、そんなこと普段なら思いません。ましてやいつも仲良く一緒の日々を過ごしている家族に。
これはおかしいと思い、自分で調べたところ『ミソフォニア』が検索にヒットしたとのことでした。
ミソフォニアの症状と自分の症状が一致したことから “自分はミソフォニアなのだ” と自覚し、それからは家族に自分の症状を伝え、理解・配慮をしてもらっているようです。
家族のみならず、誰かが出す『歯磨き・咀嚼音・喉越し音』などは頭に響いてしまって苦しいようですが、友人や特に関わりのない人に対しては、”殺意が芽生える” などの気持ちにはそこまで発展しません。
自分に対して近い人間ほど、イライラや嫌悪感がより大きくなってしまうみたいです。
3.私(恋人)に対してのミソフォニアの反応
さきょうさんにとっての私は『恋人・好きな人』です。
その立ち位置はというと、家族よりも遠く、友人よりも近い存在。でも今は一緒の場所に住んでいて一緒に働いているので、家族よりも長い時間一緒に過ごしています。
『 家族よりも親密な関係じゃないけど、家族よりも一緒にいる私 』に対して、さきょうさんはどう思うのか。
答えは、” いつもだったら苦手な音のはずなのに、私の場合は苦手と感じない” だそうです。
理由は、好きな人だから。
何故好きな人には苦手な音も苦手と感じないのか、さきょうさんもわかりません。私だけラッキーなことに、近くで音を出したとしても嫌がられないのです。
ミソフォニアと知らずに過ごしてきた日々を思い返せば、一緒に食事もしていたし、喉が渇いていた時には「プハーッ」という声付きで飲み物を飲み、歯磨きもいつも隣でしていたので、安堵です。ずっと我慢させながら過ごしてしまっていたのかと思いました。よかった。。
⚠︎でも例外があって、
気分が落ち込んでいる時に限っては、私も苦手な音を出すと嫌悪感が生まれてしまうそうです。
気分が落ち込んでいる時と言うのは、悩み事がある時や二人でどう生きていくかなど真剣に話し合って考え抜いたときなど。その時のさきょうさんは、普段は気にしないような音でも過敏に反応したりしていました。
恋人 (彼氏/彼女) がミソフォニアだった場合の対処法
「自分はミソフォニアです」と、ミソフォニアの症状を知らない人に打ち明けるのはとても勇気のいることです。
そして恋人に打ち明けるということは、相手の反応によっては「打ち明けずに我慢し続ければよかった」と思ったり、二人がこれから一緒に居続けられるかどうかのことに関わってくるかもしれません。
以下4つの順番で対処法を紹介します。
1.ミソフォニアを知る
まずは、『ミソフォニア』についてお互い知らなければなりません。ただ音が人より過敏に聞こえて嫌悪感がするという簡単な事ではなく、病気の一つとして認識します。認識の仕方が違うと、相手と自分との間に理解の差ができ、音に対しての重みや相手が感じるストレスが理解できなくなってしまいます。いろんな症状例があることを知った上で、相手はどんな症状なのか、どんな状況に陥ってしまうのかを知りましょう。
2.相手の症状を理解する
相手がどのタイミングで不安や嫌悪感を感じるか、どの音が頭に響くのか、どのくらいだったら大丈夫なのか、相手の症状を細かく全部知りましょう。ミソフォニアの多くの人が同じような音が苦手として例が挙げられていますが、苦手な音の種類や過敏に聞こえる場面・状況・タイミングは人それぞれです。
3.どうして欲しいか相手の意見を聞いて話し合う
苦手な音からの最も安全な切り抜け方を知っているのは、ミソフォニアの相手です。苦手な音に対して避けられない場合はどのように対処したら良いか、どのようにしたら一番楽なのか、相手の意見を聞いてどのように行動すれば良いか話し合いましょう。そして相手が一番落ち着けるような環境を作り上げてあげるのです。
4.音が出てしまう時は事前に言う/配慮する
どうしても相手の苦手な音を出してしまう時はあります。大半が人が出す音なので、出さないわけにはいきません。でも最低限の配慮として、音が出てしまう時は事前に相手に伝えましょう。事前に伝えることで相手は音をなるべく聞かないように予防ができ、音を身構えることができます。そして音の音量・音を出す場所を考え、周りに違う音を流すなどの対策をするなどの配慮をしましょう。
相手に絶対にしてはいけない事
ビーガン(絶対菜食主義者)の人にお肉を食べさせようとしても食べてくれないのはもちろん、まずお肉を食べるという考えすら伝わらないように、ミソフォニアも同じくミソフォニアの人でないと理解できない音の響きや嫌悪感などがあります。
そして、そのミソフォニアの人に対し、かける言葉や起こす行動を間違えてしまうと知らない間に圧力をかけてしまったり、「やっぱり理解されていない」と思われ、さらに閉じこもってしまったり症状を悪化させてしまうかもしれません。
ミソフォニアの相手に対してどのような行動をとったら良いのか、正しく理解して相手との関係を悪くさせないようにしましょう。
1.「私も嫌な音あるよ」と共感しない
この言葉は禁句です。
この言葉を言えば、「私はミソフォニアを理解していません」と言っているのと同じ事です。何故なら、一般の人が感じる ”嫌な音” とミソフォニアの人が感じる ”嫌な音” は、全くの別物だから。
黒板に爪を立てた音や、お皿にナイフの音を立ててしまった時に感じる ”嫌な音” と一緒にしてはいけません。私たちはその音を聞いても、ただ一瞬「ウワ!」と嫌な気持ちになるだけですが、ミソフォニアの人は頭の中にその音が強く大きく響くように聞こえ、不安を煽られるようにどうしようもない気持ちになったり、イライラが抑えきれなくて音を出した人に激昂してしまったりするんです。
「私も嫌な音あるよ」と共感しても、まずその “嫌な音” 自体が違う捉え方であるため、それは共感ではないですし、ミソフォニアの人たちはそもそもそんな「嫌な音」で片付けられないのです。
2.病気の一種と理解してあげない
ミソフォニアは医学的には詳しく証明されておらず、一般病院では『聴覚過敏』として診断されるようです。
発達障害の一種の聴覚過敏とミソフォニアは似ているようで少し違っていますが、『ミソフォニア』として診断されるには専門機関に診てもらわなければならないとのことでした。(引用元:原マサヒコ Official)
医学的に明確にされていないと言っても、一般の人が聞くよりも遥かに過敏に音が聞こえてしまうことは間違いありません。大袈裟かもしれませんが、周りがミソフォニアを ”病気” として認識することで、ミソフォニア人の音の苦しみを軽いものだと安易に考える人が少なくなって、ミソフォニアの人が生きやすい社会になるはずです。
3.苦手な音を無闇に出す
友人関係などでよくある、じゃれ合いや冗談として相手の嫌なこと(こちょこちょなど)を繰り返しする場面があると思います。苦手だという音が出てしまうのはしょうがないことですが、そのじゃれ合いの感覚でミソフォニアの人の苦手な音をわざと音を出すのは持っての他です。
配慮に配慮を重ねて、苦手な音に関してはかなり慎重に行動しましょう。
まとめ
私の彼のさきょうさんは、軽度のミソフォニアです。
ですが、私に対しては例外(さきょうさんのテンションが低い時/気分が落ち込んでいる時)を除いてミソフォニアの症状は出ません。理由は『好きな人』だから。
さきょうさんは主に自分の家族に対して気持ちが昂ってしまうので、もしかしたら二人の関係がこれからもっと親密になっていった時、家族のように認識されて、私に対してもイライラや嫌悪感が生まれてしまうようになるかもしれません。
ミソフォニアの人の全員が恋人に対して『好きな人だから苦手な音を出したとしても平気』と思うことはないと思いますが、私がさきょうさんに 「あなたの音なら平気」 と思ってもらえているのは、普段から細かく配慮をして気を遣っているからなのかもしれません。
恋人がミソフォニアの人がいれば、まず相手を十分に理解してあげて、どのように過ごすのが楽か意見を聞いて話し合い、前述した配慮・音の対策や対処法を実践してみてください。
音に囚われないお互いが気持ちの良い生活ができますように。